祇園祭のはじまり…現代の形にいたるまで
祇園祭と聞くと、山(やま)や鉾(ほこ)が通りに立ち並ぶ風景を思い浮かべる人が多いかもしれません。実は祇園祭は山や鉾が立つ期間だけでなく、7月1日から約1ヵ月間あり、神社や京都の街ではさまざまな祭事が行われます。これらはすべて八坂神社の祭神に厄除をお祈りするためのものです。八坂神社の祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)・櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)・八柱御子神(やはしらのみこがみ)で、神社の創祀については諸説ありますが、社伝では斉明2 年(656)と伝わり、都が京都に遷る以前よりこの地に祀られていたといわれています。
祇園祭の始まりは平安時代。貞観 11 年(869)に、都をはじめ日本中に厄病が流行したときに、人々が災厄の除去を願って平安京の広大な庭園であった神泉苑に当時の国の数にちなんだ 66本の矛(ほこ)を立て、祇園社の神輿を神泉苑に送り、祇園の神を祀りました。祭りは時代を追うごとに盛り上がりを見せ、室町時代には、各町に山や鉾が立つ現在のような姿になったと伝わっています。応仁の乱による中絶もありましたが、明応9年 (1500) には復活し、その後、山鉾の装飾は豪奢を極め、今日の姿へにつながりました。
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“クライマックス” 前祭宵山→山鉾巡行のたのしみ
街がいよいよ祇園祭一色になる前祭宵山
前祭の宵山期間が始まると、いつもの街の様子が一変。日が暮れ始め、通りに立つ山鉾に提灯が灯されると、祇園囃子が高らかに鳴り響き、露店が軒を連ねる街に多くの人が繰り出します。通りでは、揃いの浴衣で粽(ちまき)を売る子どもたちの姿が見られます。
名物ともいえる粽は、祇園祭のときにだけ八坂神社や各山鉾の会所で販売される、笹の葉でつくられたお守りです。京都は祇園祭で買った粽を一年間玄関先に飾る風習があり、毎年多くの人がこれを買い求めます。基本的には厄病・災難除けのお守りですが、山鉾によってさまざまなご利益もあります(孟宗山(もうそうやま)の親孝行、山伏山(やまぶしやま)の雷除けなど)。粽を買うと鉾に乗れる所もあります。見上げる高さの鉾に乗るのは、宵山ならではの楽しみでしょう。
動く美術館・山鉾巡行
山鉾巡行とは、神輿が渡御する通りを払い清めるために行われるものです。17日に行われる山鉾巡行は前祭と呼ばれ、八坂神社を出発した神輿を御旅所へお迎えする露払いの役割を担っています。「動く美術館」とも呼ばれる山鉾は、国の重要有形民俗文化財、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されており、細部まで芸術品に飾られた美しさは圧巻です。いまや祇園祭のシンボルとなっている山鉾ですが、これらは初めからあったものではありません。前述のように、そもそも祇園祭は朝廷の祭礼として、66本の矛(ほこ)を立て神輿を巡行する神事に始まりました。しかし、時代を下るにつれて祭りの担い手は経済力をつけた京都の町衆へと継承され、室町時代には各町がこぞって山鉾を出すように。その後、応仁の乱による中絶からの復活を契機に、山鉾は趣向が凝らされたものへとどんどん変化していったのです。 桃山時代に入り、海外との貿易がさかんになると、山鉾は各国の美術品で装飾されるようになりました。ペルシャ絨毯やベルギー製のゴブラン織りなど、その装飾は実に国際色豊かです。幾度の中絶を経ながら、次第に豪華になっていった山鉾に、京都の町衆の経済力と祭りへの強い情熱を感じることができるでしょう。
巡行する鶏鉾と月鉾。祇園祭の山鉾巡行の最大の見所の一つ辻回し(つじまわし)。
「ソーレ」「エンヤラヤー、ヤー」の掛け声とともに。
巡航する函谷鉾(前祭)/上 と 北観音山(後祭)/下。
それぞれの山鉾が誇る荘厳な装飾・懸装品は、それらを見て回るだけでも価値がある。
“もうひとつのクライマックス” 後祭宵山→山鉾巡行のたのしみ
前祭とは違った後祭宵山の情緒
前祭が神幸祭の露払いであることに対し、後祭は神様をお見送りする還幸祭の露払いです。この後祭が復活したのは平成26年(2014)のこと。交通事情などの理由によって長年前祭に統合されていましたが、祇園祭を本来の形で継承するため、約半世紀ぶりに復活しました。前祭から時期を遅らせて建てられた後祭の山鉾は、前祭と同様、鉾曳初(ひきぞめ)・山舁初(かきぞめ)を経て宵山を迎えます。にぎやかな前祭と異なり、後祭の宵山は露店もなく落ち着いた雰囲気。祭りの終焉を控えた街を、提灯が優しく照らしています。また、前祭・後祭の宵山では、旧家や老舗が美術品や調度品を公開する屏風祭が盛んです。伝統的な京町家で煌びやかな屏風をはじめ、着物や武具などの家宝が拝見できるのも祇園祭の楽しみのひとつ。祭り情緒に染まった山鉾町で、歴史ある京都の文化を感じることができるでしょう。また、前祭宵山の16日、後祭宵山の23日には、22時頃から巡行日の好天を願って、山鉾の囃子方が御旅所へ向かう日和神楽が行われます。こちらも宵山を語る上で欠かせない大変風情ある行事です。
後祭 山鉾巡行のみどころ・大船鉾
この日に巡行するのは鉾1基、山9基。前祭とは順路を逆にして、烏丸御池を出発します。巡行のしんがりを務めるのは、後祭と時を同じくして復活した大船鉾(おおふねほこ)です。大船鉾は、幕末に起きた蛤御門の変によって鉾の木組みや車輪などを焼失し、その後約150年もの間、巡行には参加せずに残された装飾品を展示する「休み山」として祭りに参加していました。大船鉾が復活したのは、まさに京都人の熱い心意気あってのことです。多くの歴史資料をもとに再建された大船鉾は、高さ約6m、全長約7mという大きさを誇っています。 そしてこの大船鉾は、実は前祭で巡行する船鉾と同じ船を表現したもので、前祭の鉾ではご神体である神功皇后(じんぐうこうごう)が戦に出発する場面、後祭の鉾では神功皇后が戦から無事に帰還する場面が表現されています。大船鉾による大迫力の巡行をもって、後祭の巡行は幕を閉じます。
巡行する大船鉾。平成26年より完全復興した。
祇園祭を楽しむための便利ツール
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掲載情報は 『京都12ヵ月 7月の京都』より引用
https://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=2029
写真:公益社団法人京都市観光協会
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