京都市上京区に位置する帯地製造業の老舗「渡文」を母体とする公益財団法人 手織技術振興財団「織成舘(おりなすかん)」にて月釜会が行われました(2022年11月27日)。毎月28日頃に懸釜される「織成月茶会」は流派を問わず行われます。
霜月のお席主は、岐阜の川北旧街道の樽綱本店六代目で長良泉販売元である神谷登貴彦氏(裏千家)。大学時代に数寄に魅せられ茶に熟中する「男の茶会」メンバーです。男の茶会は、年6回開催し男性7人で持ち回りの茶事を行い、現在14年84会を数えます。
待合の掛物は神楽岡不入(松枝不入)筆 西行しぐれ画賛
尾張、美濃は現在では愛知県、岐阜県にあたりますが、この地の茶道との関わりは、そのまま日本の歴史と重なります。尾張、三河の両国からなる愛知県は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といずれも茶道の歴史に重要な役割を果たす三人の覇者が生まれた地です。そして千利休は茶の湯を通して彼ら天下人と交わり現在の茶道隆盛の礎となりました。また、美濃の地である岐阜県の茶道は、信長、秀吉に仕えた金森長近が飛騨に入部したことに始まります。長近は早くから茶の湯に興味を示し、利休門下として京都・堺にも知られていました。その後を受けて、茶匠として名を上げた金森宗和は長近の孫にあたります。このように、尾張、美濃は茶人をはじめ焼物などの茶道文化を多く生み出した地なのです。
お席主による自筆の会記。地元ゆかりのお道具の取り合わせから、おもてなしのお気持ちが伝わります。
和漢朗詠集 井ノ口切 将軍 花入は古伊賀
仙叟好 雁香合、古帛紗は頼朝間道
釜は愛知ゆかりの茶人森川如春庵好、三傑釜。茶杓は玄々斎作「五明籖」火入れは古志野累座四方
有楽棚に取り合わせた水指は日本六古窯の一つ、愛知の常滑焼、烏帽子
お菓子は、尾張一宮の川村屋賀峯製「椿餅」
最後にお席主からのご挨拶を紹介いたします。
「中京地区は古くより焼き物の一大生産地であり、志野織部といった桃山茶陶の故郷でもあります。幕藩時には大藩尾張徳川家の影響が強く、七代藩主宗春公の経済緩和策により、全国から職人や文化人が尾張に集まりました。一家一流というほど茶の湯も盛んになり、碾茶に特化した西尾の茶は地場産業として現在に至っております。岐阜は江戸初期に天領から尾張藩領となりました。長良川の水運に恩恵を得た商人たちは、殿様に続けとばかりに茶の湯を楽しみました。江戸後期、不昧さんとの関わりができたのもそのような背景があったからかもしれません。近代になり関東大震災で被災された鈍翁さんが名古屋に疎開され、この地の茶の湯はさらに盛り上がりを見せました。「名古屋は和歌どころ」と言われるのはこのころからでしょうか。数寄の茶ならではの鱒鰹審判茶事や大雷事件など愉しい逸話が今に伝わります。霜月の茶会ではそんな中京の喫茶文化の一端をご紹介できればと思います。」
所在地 | 京都市上京区浄福寺通上立売上る大黒町693 |
TEL | 075-431-0020 |
営業時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 月曜日(祝日は開館) |
入館料 | 大人1000円 高校生以下400円 ※団体割引(10名様以上) 大人800円 高校生以下300円 |
市バス「今出川浄福寺」から北へ徒歩7分、または「千本上立売」から東へ徒歩5分
●京都駅から ●地下鉄今出川駅(3番出口)から ●阪急大宮駅から ●JR二条駅から ●京阪出町柳から 駐車場あり。 |
織成館のデジタル茶の湯マップの情報はこちらからご覧になれます。