おかやまこうげい
江戸時代に、扇絵師・宮崎友禅斉によって生み出された手描き友禅。企画・図案(草稿)・下絵(青花)・糊置・伏せ糊・地染め(引き染め)・蒸し・彩色(挿し友禅)・蒸し・金・刺繍と、一反の白生地を染め上げるまでの工程は10以上もあり、昔も今も全て分業で行われます。 岡山工芸は、共に友禅の手描き友禅職人で、「京の名匠」岡山耕三(現・会長)、日本初の女性伝統工芸士で「京の名工」武子の夫妻が設立。最初は委託加工から始まりましたが、取引先の様々な要望に応えていくうち、現在では企画から取りかかり、オリジナルブランドやオーダーメードの受注までを行っています。図案、色合わせ、糸目糊置、彩色などの工程を担う専門の職人を多数抱え、近年は豪華優美な着物や帯だけでなく、リーズナブルな金封袱紗やお薬手帳カバーといった小物も手掛け、手描き友禅の新たな魅力発信にも力を注いでいます。
岡山武子さんが「京の名工」を平成18年度に受賞した際に制作された「王朝文舞(おうちょうぶんまい)」の着物(部分)。王朝文化への憧れを、さまざまな技法を駆使して美しく仕上げた手描き友禅の真骨頂の一つ。
丹後や長浜の白生地に、糸目糊をおいていきます。図案は、新作はもちろん、創業以来培ってきた18000柄。実に種類豊富です。
社内外、合わせて100人近くの職人を抱える岡山工芸。全く経験の無い人も雇い入れ、手描き友禅の職人として一人前になるまで育て上げることも使命としています。
岡山工芸のロゴマーク。くるくる回る反物とハケや伸子。そこにはそれぞれの工程を担う職人たちの姿があります。たくさんの人が集まりそれらが輪になって生まれる手描京友禅の世界があらわされています。
京都市のものづくりプロジェクト「あたらしきもの京都」で生まれたお薬手帳カバー、銀行通帳や文庫本も入るサイズです。現在はTONE & TONEシリーズとして、9種類を展開しています。
色とりどりの金封袱紗。着物や帯地の端切れ、見本裂などを使って作られています。同じ柄でも一つとして全く同じではない、手描きならではの風合いが楽しめます。
帯の図案を元に商品化したONE TONEシリーズの金封袱紗。白地に黒、グレー地に白や黒の線描で表現したモダンな表情の手描き友禅です。一つ一つ手編みされた組紐は6色から選びます。
ONE TONEシリーズの金封袱紗をアレンジした念珠入れ。リバーシブルの組紐は5色からお好みを選べます。
代表取締役社長の岡山摩紀さん。「母(武子さん)からは、『人が着て動くことによって柄が舞い、生き生きと動き出す。着た人が引き立つような着物を作る』と言われたことがあります。これからも現役の父や母、職人たちとともに、手描き友禅の素晴らしさを伝えていきたいです」。
自身が手がけた着物と帯を身にまとう岡山武子さん。「人が持っていないもの、私が着たいと思うものを作っています。この着物1枚に60色ほど使っているんですよ」と語り、色違いでシリーズ化しているトレードマークのような着物なのだとか。着物を作ることが楽しくて、ずっと続けてきた武子さんが「好き」を突き詰めた結果だと言います。
友禅染体験では、これまでに小学生から高齢者、外国の人々にまで老若男女が興味を持って訪れています。「日本人の衣装なのに、遠くから『いいな』と見てるだけの着物ではなく、ハードルを下げて『構えなくてもいいんだよ』と伝えたい」武子さんと摩紀さん。「会社に来てもらって、ここで作っている様子や商品を実際に見てもらい、着物のバックグラウンドを知ってもらい、その上で体験していただきますが、まずは楽しんでいただいて親しみを持ってもらいたいです」。
体験内容は、資料室のプロジェクターでビデオ鑑賞、パネル説明を受け、工房を見る見学と、友禅染体験の2種類。見学と体験で最低1時間は必要になります。体験場所はなんと工房の一角で、職人さんたちが真剣な眼差しで作業する様子を肌で感じながら、自分もまた職人(見習い)になったような気分を楽しめます。
用意された約10種類の下絵から選びます。既に糸目の職人さんにによる筒描きが施されています。
染料8色と色見本。容器の中の染料は黒っぽく見えて色が分かりにくいので、色見本を参考にしながら、1色ごとに筆を変えて染めていくのが友禅染の特徴です。
生地を伸子に張てもらったら、いざ、染めのスタートです。作業の目安は30分ほど。職人さんに質問すればアドバイスがもらえますが、基本は自由制作してもらいます。「機械で作ったきれいではなく、はみ出たり、ゆがんでしまったり、そんなことも含めた手作りの良さを感じて、面白いと思っていただければ」と摩紀さん。
染め終わったら、ドライヤーで乾かしてすぐ持ち帰っていただきます。部屋に飾ってもらえるよう、額に入れて完成です。「もし2~3週間ほど時間をいただけるなら、後加工といって、蒸し加工やフチかがりを施してハンカチに仕上げてお送りすることも可能です。待つのも楽しみになりますよ」。
ミニ作品の制作のほか、帯揚げやスカーフの制作体験もできます。刷毛を使って染めていきます。
体験は常時受け入れていますが、時間がない人は見学だけになってしまうので、余裕をもって訪問するのがおすすめです。時間があるからと、ハンカチと帯揚げの両方を制作する人も時々いるそうです。グループの場合は30人までOK。まずは気軽にご連絡を
住所 | 京都市伏見区深草西浦町8丁目2-2 |
TEL | 075-643-4317 |
営業時間 | 8:30~12:00、13:00~17:30 |
定休日 | 日曜日、祝日、第2・第3土曜日、夏期、年末年始休業 |
アクセス | 〈公共交通機関〉 地下鉄烏丸線-くいな橋駅下車 南東へ徒歩8分 ▶ ここへ行く(Google Mapを開く) |