こうせつけん
江戸時代後期、筆職人だった初代が創業。厳選した獣毛、素材を使用し熟練の技で手作りされるオリジナルの筆に、硯、墨、紙を加えた「文房四宝」を扱います。その高い品質と誠実な商いは広く評判を呼び、名だたる文人墨客にも愛されてきました。富岡鉄斎氏、谷崎潤一郎氏、武者小路実篤氏など、歴代の華やかな交流の軌跡は、店内の扁額からもうかがい知ることができます。五代目当主の長岡輝道さんが店を守り継ぐ今も、世界的に活躍する書や画の専門家、京の寺社仏閣や老舗など、幅広い層から並々ならぬ信頼を集めています。だからといって初心者や旅行者が入るのに気後れするような店ではなく、訪れれば「何にお使いになりますか」と和やかに話しかけてくれる気さくな雰囲気。豊富な品揃えのなかから、手へのなじみ、書き味などを試しながら、用途や好みに応じた筆を選ぶことができます。店主ご夫妻との心あたたまるコミュニケーションを楽しみに、日本全国、また中国など海外からお客さまがおいでになるというのにもうなずけます。老舗の情緒と深い懐を感じながら、あらためて筆を使う楽しみに出会える店といえるでしょう。
二条通りに面してたたずむ店舗は、軒先に下がる大きな筆が目印。味わいのある看板は、2代目の当主が大正末に店舗を改装した際に、顧客のひとりであった書家・山田古香氏に依頼したもの。
約200種類もの筆が並ぶ店内は、壮観。書に画に、趣味人からプロまで、愛用者は幅広い層にわたります。
ウインドウには、店主の長岡輝道さん曰く「面白い原毛が入った時につくったものを中心に」個性のある限定商品が並びます。他では手に入らないような一点ものもあり、創作意欲をかきたてる出会いに期待して訪れる方も多いとか。
店内には、文豪たちとの交流の証がずらり。「開益書堂」としたためた富岡鉄斎氏は、この屋号の名付け親。ほかにも武者小路実篤氏による屋号の扁額や絵画、長尾雨山氏の扁額、谷崎潤一郎氏の手紙など、贅沢な顔ぶれ。小説を筆で書いたという谷崎潤一郎氏は、著書『瘋癲老人日記』で主人公が墨・硯・紙などを買いに行く店として、香雪軒を仮名で登場させています。
夢のようにカラフルで美しい「御題筆」は、毎年1月に発表される翌年の宮中歌会始のお題からイメージをふくらませ、連想される色で意匠を決定。染めつけた化粧毛を1本1本並べてつくりあげられるその年オリジナルの筆です。60年以上にわたりつくられていますが、毎年の御題筆をすべて揃えている常連さんもいらっしゃるとか。店頭に並ぶのは11月末からお正月にかけての期間のみ。限定品ゆえ確実に手に入れたい方はご予約を。
店主・長岡さんご夫妻の気さくかつ丁寧な接客で、こころゆくまで書き心地を試して納得のいく筆を選べます。たとえ書画の心得がなくとも、すすめられるままに筆を手に取ると、ワクワクと胸がはずみます。おふたりの人柄に魅せられ、香雪軒ファンになる人もあとを絶ちません。
住所 | 京都市中京区二条通河原町東入ル |
TEL | 075-231-1695 |
FAX | 075-231-8768 |
営業時間 | 10:00〜19:00 不定休 |
アクセス |
地下鉄東西線京都市役所前駅より徒歩約5分 |