おかしつかさ ほんけきくや
金魚の町として知られる大和郡山市で、およそ400年もの歴史を持つ老舗和菓子舗。初代の菊屋治兵衛が、当時の郡山城を居城としていた豊臣秀長から「兄・秀吉をもてなす茶会ために珍菓を作るように」と命じられ、考案した「御城之口餅(おしろのくちもち)」が名物です。お茶会に献上した時にはまだ銘がなく、粒餡を餅で包み、きな粉をまぶしたものでしたが、お菓子を食べた秀吉は、とても気に入り「鶯餅」の銘を授けたといわれています。一説では全国にある鶯餅の原形であるともいわれています。やがて徳川家の時代となると、店の場所が城下町の町人街の1軒目に当たることから、いつしか「城之口餅」と呼ばれるようになりました。「この辺りの古い子守歌で『城之口ほど甘いものあろうか』などと歌われていたそうです。憧れのお菓子の一つだったのかもしれません」と当主の菊岡洋之さん。今では散策やツーリングで訪れた人たちが、表を開け放した昔ながらの商家の店先で一服していく、休憩ポイントにもなっています。
嘉永の大地震(1854 年)に倒壊し、再建した商家造りの建物。軒先の床几に腰掛けて、お菓子と番茶をいただいてひと休みすることができます。
干菓子の木製の菓子型で埋め尽くされた小上がりの天井。圧倒される数と種類で、芸術品のような存在感ですが、今も現役で使われているとか。
北海道産の大粒小豆、厳選された青大豆と、近江産の餅米を搗いて作る餅を使い、素朴な素材そのままの味が魅力の「御城之口餅」6個700円~。店先でいただく時は3個と番茶がセットで300円。「鹿もなか」や「菊之寿」を選ぶこともできます。
北海道産の希少な福白金時豆で作った黄身餡を、練乳を加えた洋風生地で包み込んだ「菊之寿(きくのことぶき)」5個1,500円~は60年以上愛されている逸品。こし餡とパリッとした皮のバランスが絶妙で、鹿の焼き印が愛らしい「鹿もなか」5個1200円~。どちらも5個入りのパッケージは、正倉院に収められている撥鏤(ばちる)の文様をあしらっています。
奈良時代に平城京周辺にあった7つの寺の古代瓦をモチーフにし、豆落雁に仕立てた「南都七大寺」8枚1500円。吉野本葛100%と和三盆糖で作られた干菓子「つみ小菊」25粒入り2000円。
大和郡山市の名産である金魚を、色とりどりの錦玉で表現した「金魚すくい」500円。箱のつまみを引くと、金魚鉢に泳ぐ金魚が姿を見せます。
現在は江戸時代の御城の様子を描いた図案を印刷したものに。
26代目当主・菊岡洋之さんは「御城之口餅は昔ながらの製法で作っています。素材もできるだけ国産のものを厳選しています」と語ります。看板商品である「御城之口餅」は豊臣秀吉が命名したことから、「秀吉の弟である秀長は千利休、小堀遠州とも交流があり、自身の居城がある大和郡山に招いていた記録が残っています。ひょっとしたら、この御城之餅を食べて頂いていたのかもしれませんね」と語ります。
所在地 | 奈良県大和郡山市柳1丁目11番地 |
TEL | 0743-52-0035 |
営業時間 | 8:00~19:30(1/1のみ休) |
アクセス |
〈公共交通機関〉近鉄橿原線「近鉄郡山駅」下車 北東へ徒歩5分 |