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なごみ3月号「老舗の京料理」‐竹茂楼‐

 

― 美濃吉本店・京懐石 竹茂楼 ― 第6回

 

竹茂楼へ取材に訪れたのは、一月半ばのことでした。取材スタッフが到着したちょうどその時、昼食をゆっくりと楽しまれたお客さまが店をあとにされ、春の着物に身を包んだその姿を、お店の方が丁寧に見送っていました。そんな何気ないシーンに、この店が積み重ねてきた時間の長さを感じました。

 

『なごみ』の誌面で紹介してきた竹茂楼の料理には、器のどこかに洋食器が取り合わされている、という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。器選びを担うのは女将の佐竹由紀子さん。京料理の枠にとどまらない、その感性はどのように培われてきたのか尋ねてみました。

 

「もともと美術館巡りが好きで、東京でも神戸でも、海外でも、どこへ行っても必ず絵や美術品を見に行っています。『これはここに合うな』と思うと、自然と頭の中で置き場所を考えてしまうんです。歴史ある京都の料亭のお料理に、少し新しい感覚を加えたいという気持ちは、ずっと持ってきました。落ち着いた色味の川魚料理に、ガラスをひとつ合わせるだけで、印象がすっと変わることがありますね。今回は筍の木の芽和えに、フィンランドのサアラ・ホペヤを選んでみました」


お話しを伺った女将の佐竹由紀子さん

淡路島の老舗の造り酒屋に生まれ、神戸で育った佐竹さんは、嫁いでからしばらく、10代目の留学に伴ってサンフランシスコで三年を過ごされたといいます。国内外で重ねてきた経験が、竹茂楼の料理と器の「取り合わせ」に、自然なかたちで息づいています。

 

続いて、そんな女将さんに育てられた次男の佐竹洋治さんに、店の歴史や今回の献立のことについてうかがいました。

 

「自ら道を切り開いていく精神を継承しています。
料亭をささえる女将の存在も大きいですね」


お話をうかがった10代目の次男の佐竹洋治さん

 

「私どもは今年310年の節目を迎えましたが、初代は江戸時代に武士の身分を捨てて京都で商売を始めています。ですから、美濃吉のスピリッツの根源には『プライドにこだわらず、道を開いていく覚悟』があると思っています。これまでも伝統を大切にしつつ、新しいことにチャレンジしてきた歩みにも、創業の精神が息づいています。

 

3月号のお料理は、お雛さんの時期ですので、朱色や黄色を意識して選びました。まずは色合いを考え、そこから器や盛り付けを考えています。酒肴の諸子は琵琶湖のもので、この時期ならではの味わいですね。さまざまな料理を少量ずつ片口に盛り付けたのは、取り合わせの妙を楽しんでいただこうという趣向からです。

 

椀物に選んだ黒あわびは、柔らかく調理することで上品な風味と深みを引き出しています。その技を磨く際には、大学の先生方から科学的な視点で助言を受けました。これは京料理組合の取り組みのひとつなのですが、長年培ってきた職人の知恵と勘に、科学的な視点を重ねることで、よりよい料理を目指しています。京都には、各店が点となって努力しながら、面として京料理を継承していこうとする気概があり、それが伝統を守り続ける力になっているのだと思います。

 

また、料亭においては女将の存在がとても重要ですね。場の空気を読み、機転をきかせ、お客さまに心地よく過ごしていただく。その役割を、私は幼いころから見てきました。着物姿で、夜遅くまで店を守っていた母の姿は、今も記憶に残っています」。


3月の酒肴は塗肌の美しい片口に季節の味を見栄えよく盛り付けられています


筍の木の芽和えはフィンランドのサアラ・ホペヤのグラスに盛り付けてモダンな一品に


椀物は、黒あわびにひな豆腐を合わせて。黒あわび、日々、技の研鑽に取り組み最上の味に仕上げています


五箇山から移築した合掌造りの別館に女将の器コレクションが展示されています