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なごみ2月号「老舗の京料理」‐魚三楼‐

 

なごみ2月号「老舗の京料理」 第5回

1764年(明和元年)創業の魚三楼を訪ねたのは、師走に入ってからのこと。これまで「なごみ」の取材には9代目が応じてこられましたが、今回は家業に戻って7、8年になるというご子息で10代目となる荒木裕一朗さんが、料理や器について話してくれました。

プロスポーツの世界を経て料理屋の現場に立つ10代目の言葉からは、異なる二つの世界に通じる感覚や、料亭での食事にも、ある程度の自由があっていいという思いが伝わってきました。今回は、そんな日々の仕事の延長線上にあるお考えを、取材こぼれ話として紹介します。

 

今回の取材こぼれ話はこちら。

☝器選びは新旧を自在に取り入れて

☝料理は自由に楽しく味わってほしい

☝10代目が思い描く魚三楼のこれから

 

「これまで積み重ねてきたものを守りながら

いつかは自分らしい挑戦もしたい」

 

お話をうかがった10代目の荒木 裕一朗さん

「2月の献立ということですので、まず八寸とお椀に梅の器を選び、そこから向付を考えました。うちは、以前から新旧の器を柔軟に合わせてきましたので、今回も向付は現代作家のものを選んでいます。器選びは、基本的にはその月の献立全体の流れを見て決めますが、その日に使いたいと思った器から考えることもあります。

向付は茶懐石を念頭に、鯛を唐墨や白菜と味わっていただく献立にしました。白菜は軽く塩をして、食べやすくしています。これを一緒に召し上がっていただくイメージですが、どのように召し上がるかは、お客様の自由にしていただくのが一番だと、私は考えています。もし料理屋としておすすめがあるのであれば、迷わずそう召し上がれる形でお出しすればいい、そんなふうに思っています。

月の献立は、父である9代目と、子どもの頃から調理場を支えてくれている職人、私の3人で考えています。献立づくりも調理場の仕事も、料亭はまさしくチームプレー。私は家業に戻る前、プロのアメリカンフットボールの世界にいましたが、そこも一人では何一つ成り立たず、みんなと協力しながら勝利を目指していました。その点は、料理屋の仕事とも通じるものがありますね。

魚三楼は、地元のお客さんに使っていただきながら暖簾を守ってきました。お祝いごとや法事のお席、そうした場を今後も大切にして担っていきたいですね。一方で、私個人としては、時代に応じた新しい取り組みにも挑戦していきたいと思います。祖父は、料亭としては初めてとなる百貨店での惣菜販売を始めたと聞いていますし、父は仕出しが中心だった商いを料亭へと変えていきました。ですので、まだまだ及びませんが、私も自分なりの形で次の一歩を探していきたいですね」。

 


向付は鯛を唐墨と白菜でいただく趣向です。たらの芽は軽くてふわりとした白扇揚げにしています


八寸は諸子南蛮漬、黒豆湯葉汲み上げ、鮒ずしの手毬寿司、蕨、鰯当座煮、蕗の薹、平目の昆布〆すぐき和えが彩りよく盛り付けられています


煮物椀は鰤のみぞれ椀。寒中にしみいるみぞれ仕立てのお椀はみじん柚子と菜花で春の兆しを匂わせています